2011-03-13

魔女の宅急便 (角野 栄子)

ジブリの映画で名高い「魔女の宅急便」の原作を図書館で読みました。原作者は角野栄子さんです。

魔女の宅急便 (福音館文庫)
角野 栄子 林 明子

4834018121
福音館書店 2002-06-14
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最近のジブリ作品は原作をないがしろにした作品が多いですが、「魔女の宅急便」当時はまだ原作に忠実で、映画独自のテイストを加える映画化をしていたようです。

ストーリーの大部分は映画と同じ。魔女の子キキが黒猫ジジを供って、13 歳になったら魔女の修業に出るというもの。途中で出会う別の魔女の女の子。パン屋のおソノさん。飛行機大好きのトンボくん。絵描きのウルスラさん。と映画と同じキャラクターが原作でもちゃんと登場します。映画クライマックスで、飛行船から落ちるトンボくんを助けるシーンは原作にはありませんでした。

原作は児童文学と呼ぶに相応しく、時に辛いこともあり、時に人に思いやりに振れ、キキは一年の修業を経ます。最後の章は、実家への帰省。そして、「魔女の宅急便」の町へ戻るところで終わります。

秘密をのぞく

特にお気に入りのエピソードがあります。第 7 章「キキ、ひとの秘密をのぞく」です (映画版では未採用)。

同年代の女の子から、ラブ・レターの宅急便を頼まれたキキ。宅配中、内容が気になったキキは中身を覗いてしまいます。いけないことです。そして運の悪いことに、ラブ・レターは風に飛ばされてしまいます。キキは、内容を思い出しながら (ちょっと文面の違った) ラブ・レターを届けます。

結果を書くと、その女の子は男の子と仲良くなることに成功します。

でも、私がお気に入りになったのは「結果」ではありません。成功談を話しに来た女の子に対して、キキがちゃんとラブ・レターの中身を読んでしまった。なくしてしまった。代筆したものを届けた。と、ちゃんと正直に話すところです。ちゃんと謝るところです。「結果」が良かったのだから、内緒にしていても良かったのです。でも、悪いことをしたら、ちゃんと謝罪する。そういう心の素直さが現れているので、このエピソードが好きです。

若い頃には、どうしても失敗をしがちです。だったらどうしよう? 児童文学は子供達にそういう場合の指針を示す、という重要な使命があると思うのです。だから、キキは最初から中身を見なければ良かったとアドバイスしたり、宅急便屋としてそれはいけない行為だと非難したり、といった「大人の対応」(?) を出さない角野さんのスタンスは、児童文学の在り方にそったものだと感嘆した次第です。

現代社会を見るに、日本では「失敗」をことさら嫌う傾向を強く感じます。小説においても、伏線になる失敗はあっても、モラルの模範たるべき「失敗」は見かけなくなりました。もしかしたら、大人こそ「魔女の宅急便」の様な児童文学を読むべきなのかもしれません。

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