2012-03-09

あだしもの (山本久美子) 連載始まる

先のエントリーに書いた通り、ジャンプ SQ 2012/04 号より山本久美子さんの初連載「あだしもの」がスタートしました。巻頭カラーでスタート。おめでとうございます。

ジャンプ SQ. (スクエア) 2012年 04月号 [雑誌]

山本久美子さんの作品は、当ブログで何度も取り上げているので説明は不要でしょうかね。詳しいことは過去記事をお読み下さい。というのも味気ないので簡単に。

山本久美子さんは今までに三本の読み切りを発表している新人さんです。絵がとても綺麗で、ストーリーは幻想的。ジャンプ SQ Comic Selection No.2 の著者のメッセージによると 大好きな妖怪を題材に描いた とのこと。過去の作品にはいずれも妖怪・魔物が登場しています。

妖怪ものと言うと、「ゲゲゲの鬼太郎」「うしおととら」などのアクションものから、「夏目友人帳」のようなハートフルな作品まで幅広いジャンルですが、山本さんの作品はどちらかというと後者。更に言えば、妖怪との交流を描くのではなく、妖怪の世界観を大事にした上で人と人との繋がりをとても大切に取り上げるタイプです。

あだしもの

さて、「あだしもの」ってなんでしょう。作中にヒントがあります。

これが (あやかし)の世界 "化野 (あだしの)"

人間世界の真横にある隠れた世界よ

どうやら「あだしもの」は「あだしの」に棲む妖を指すようです。

せっかくなので「化」を辞書をひいてみます。まずは漢字源。音読みは「カ」「ケ」、訓読みは「ける」「かす」。難読語に「化野」があります。フム、これではよく分かりません。もう一つ。漢検漢字辞典をひいてみます。音読みは「カ」「ケ」、訓読みに「ける」「かす」、表外訓に「わる」「える」があります。どうやら標準的な読みに「あだし」という使い方はないようです。しかし、「化野」を「あだしの」と読む項目がちゃんとありました (「化野」は「徒野・仇野」とも書くそうです)。引用してみます:

  1. 京都市の小倉山のふもとにある野。平安時代に、火葬場があった。
  2. 火葬場・墓場

Google でも検索してみましょう。「化野」で検索すると、京都にあるお寺・化野念仏寺 (あだしのねんぶつじ)や日本の妖怪研究家・化野燐 (あだしの りん)がヒットします。人名・地名で「化」を「あだし」と読むようですね。

少し「あだし」に関する無駄口が長くなりました。ストーリーの話をしましょう。

主人公・灰塚は高校一年生。怪異に関わり、自分の居場所を失なっています。そこへ、小町という同級生が「怪現部 (怪奇現象調査部)」に入らないか? と誘いをかけてきます。彼女も怪異に関わった一人で、怪現部はそういった者達が集まる「居場所」なのでした。おりしも、灰塚の周りでは物が壊れる現象が頻発。事件調査の中で、主人公は自分の居場所を見つける... というのが第一話。

掴みは上々。灰塚くんに取りついた怪異・小町さんは何故怪異と関わったのか・怪現部の他のメンバーは? 伏線もさり気なく張りながら、一話完結で主人公が「居場所」を見つけるストーリーは心のスッとするものでした。短編の名手 (?) たる山本さんの実力が十全に発揮された第一話です。

これから、第二話・第三話と話が続いていくわけですが、この物語がどういう風に推移していくのか? 期待と不安でドキドキです。

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